『ラムスプリンガの情景』の感想
『ラムスプリンガの情景』は美しくとてもやさしい話でした。
吾妻さんの他の作品も読んだことあるので、こんな素敵な話が書けるのかと驚いてしまいました。
他の作品も面白いんですがね。
舞台は80年代のアメリカです。
情景と言うだけあってその時代の雰囲気がものすごく伝わる作品になっています。
ドライブシアターや町での買い物には紙袋を使っているところなど。
またベトナム戦争や月面到着など、リアルな時代背景も組み込まれていて、より知りたくなってしまうオタク心をくすぐられる作品です。
あらすじ
ラムスプリンガ……アーミッシュが、敬虔なキリスト教徒として彼らのコミュニティに残るか、家族を捨て外の世界で生きるかを決めるための、俗世を体験する期間……80年代アメリカ。ブロードウェイの夢破れ、田舎の街でウエイターと男娼をしているオズは、ある日、バーに来たラムスプリンガ期の青年・テオを「客」と間違え部屋に連れ込んでしまう。行くあても無いテオを放っておけず、つい面倒を見てしまうオズ。アーミッシュであることを馬鹿にされても怒ることも、疑うことも知らない純粋な彼に触れるうちにオズはニューヨークで擦れていた気持ちが絆され、彼を愛するようになるが…。
受けのオズはブロードウェイを目指していたダンサーです。
父はベトナム戦争へ出兵し、戦死。
父との約束でもあったブロードウェイの舞台に立つことをかなえるために、プロデューサーと寝てまでも役をもらうことを夢みた。
実力や才能の壁にあたり、田舎町で逃げるように暮らしていた。
そこで、アーミッシュの青年テオと出会います。
このアーミッシュと言う厳戒なキリスト教徒とも本当に存在します。
作中にも説明がありますが、ラムスプリンガというのは、アーミッシュの人たちが自由を謳歌できる期間なんだそうです。
話を読めば読むほど、ウィキペディなんかで色々調べてもっと深く作品について知りたくなります。
ドラマのような素敵なストーリーですが、事実の世界がうまく絡まりあって実に素敵なお話でした。
追記
『親愛なるジーンへ1』を読んだ後にもう一度読み返してみるとまた面白かった。
『親愛なるジーンへ』は『ラムスプリンガの情景』に登場するテオの幼馴染のダニーの兄を主人公に書いた作品です。
ジーンは『ラムスプリンガの情景』では、故郷と家族を捨てて出て行ってしまい、ダニーの心の傷となってしまっていた存在ですね。ニジマスの話をしていたあのお河童のお兄さんです。